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特別セミナーレポート 「新規事業の創り方」片岡和也氏 @リーン・スタートアップ・ハッカソン最終審査会

2015年09月25日
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2015年8月30日、ビジネス・ブレークスルー大学麹町校舎で、特別セミナー「新規事業の創り方」が開催された。講師は、元NTT西日本アライアンスディレクターで現在は株式会社iCARE取締役最高実行責任者(COO)の片岡和也氏である。このセミナーは、ハッカソン形式を取り入れたビジネス創出イベント「リーン・スタートアップ・ハッカソン」最終審査会公開イベントの特別セミナーという形で行われ、片岡氏はこの講演後に催されたリーン・スタートアップ・ハッカソン最終審査会においても、スタートアップに精通した識者の立場として審査にあたられた。(リーン・スタートアップ・ハッカソン最終審査会のレポートは近日公開予定)
 
片岡氏
 

もともとは京都大学で黒毛和種の遺伝の研究をしていたという片岡氏だが、修士課程修了後にご本人曰く畑違いのNTT西日本に就職する。法人営業、フレッツ光商品企画・開発、人事などの部署を経たのち、企業派遣で慶応義塾大学ビジネススクールにてMBAを取得。その時の縁で現在所属している株式会社iCAREに関わることになったという。株式会社iCAREはヘルスケアベンチャーで「働く人の健康を創る」をビジョンに掲げ、特に注力しているのはメンタルヘルスの領域である。心の病になって会社に来られなくなる人が多い現代社会問題に注視し、身近な所で防ぐ方法を確立すべく日々奮闘しているとのこと。
ヘルスケア分野のビジネス化が難しい理由について片岡氏は「多くの人は皆『自分は健康だ』と思っているため、健康が大切だとわかっていてもなかなか行動につながらない」と指摘する。そこで「予防」につながる健康行動を習慣化させる新たな仕組み作りに日々試行錯誤しているという。
現在提供しているサービスが「Catchball」という健康管理のクラウドサービスで、これは企業の健康情報を一元的に管理できる。厚生労働省のストレスチェック制度義務化にも対応しており、その機能を軸とした、健康管理クラウドサービスの展開と、現在検討中の新規事業を軌道に乗せるべく現在尽力しているとのこと。
このような経歴を持つ片岡氏であるが、リーン・スタートアップ・ハッカソンというイベントに因み、これまで携わってきた新規事業立ち上げにおける数々の経験に基づいた「総合的に新規事業を創る」ことの意義について見解を語ってもらった。
 
 
■NTT西日本での新規事業の取り組み
NTT西日本は、NTTグループの中で地域通信事業を行っている会社である。富山・静岡より西側に位置する三十府県をカバーしており、固定電話とフレッツ光の通信回線サービスをあわせた顧客数は2300万世帯にのぼる。
NTT西日本が推進している「スマート光戦略」とは、街・オフィス・家庭といった様々な利用シーンで「人々の暮らしや働き方を変えるような文化を創造する」というコンセプトの下、光を普及させていくというものである。
NTT西日本はネットワーク回線を提供することに強みを持っている一方、新たな利用シーンを創出するようなアプリケーションサービスに関してはスピード感を持って対応できるノウハウを持っていなかった。そこで、光と親和性の高いアプリケーションサービスを持つ企業とコラボレーションをし、アライアンス(業務提携)によって新しいビジネスを共に生み出していくという活動を数多く手掛けてきたとのこと。こうした取り組みを、一般的にオープンイノベーションと呼ぶ。片岡氏はこうした一連の取り組みの中でも特に、スタートアップ企業とのアライアンスに注力してきた。
 
 
■オープンイノベーション
オープンイノベーションとは、企業による通常の製品開発プロセスを可視化し、社内外を問わず広く技術やアイデアを集め、今までには不可能だった技術開発を実現していくというもので、2008年頃から広く謳われるようになった概念である。日本でも近年活動が活発になってきており、ハッカソンなどのイベントもその一例である。
 そもそも大企業がオープンイノベーションを推進する理由として、大きな組織はメインの既存事業に最適化されたルールに則らざるを得ない為、新規事業を推進するにあたり、フィットしない所が出てきてしまう。そこで制約のない外の力を使って新規事業を進めたいという大企業側のニーズがあるからではないかと片岡氏は分析する。そしてアイデアソンやハッカソン、最近ではアクセラレータプログラムを提供する様々な事業者が出てきているが、事業化までがシームレスにつながる成功例は少ない。事業化までを一気通貫して続いていく事が大事であり、そこが現在のオープンイノベーションの課題だと言及。今後皆が社会の仕組みとして考えていかなければならないものであると述べた。

 
オープンイノベーションのプロセス
 

片岡氏はこの後に開催されるリーン・スタートアップ・ハッカソンについて、概念として面白いと述べた。ハッカソンでは、普段出会わない人達が一同に会してプロトタイプまで作ることで奇跡のコラボレーションが生まれる可能性があり、大企業や多くの団体が仕掛けている背景にはそういったエネルギーに惹かれてという側面が大きいのではないかと推測する。ハッカソンは、アイデアを共に作っていくところに価値がある一方で、出てきたアイデアが事業化しないことが課題であった。
そして片岡氏は「大企業がもっと変わる必要がある。オープンイノベーションを加速させていかなければならない」との思いから大企業とベンチャー企業の共創プラットフォーム「コトの共創ラボ」を今年4月に設立した。この社団法人は、博報堂・NTT西日本・nifty・スカパーを幹事企業とし、ベンチャーと大企業の橋渡しをすることで双方の持ち味を満たし、オープンイノベーションの可能性を高めていくことを目的としている。
この共創プラットフォーム設立の前段として、昨年9月に「オープンイノベーションフェスティバル」というNTT西日本主催のアライアンスビジネスのコンテストを開催。最優秀賞に選ばれたのは観葉植物のベンチャー企業だったという。光と観葉植物との親和性を見出すアイデアは、通信キャリア側からは出づらいということもあり、オープンイノベーションの醍醐味を再認識させられるイベントだったという。
ここで片岡氏は、この事例をもとに大企業側の「オープンイノベーションの成功に必要な要素」として以下の三点を挙げた。
 
・大企業の危機感
閉鎖的な体質のまま既存事業をやっていたら立ち行かなくなるという危機感を持つべき
・イントレプレナーの情熱
その危機感をもとに大企業を回せる人がプロジェクトを牽引していく必要がある
・継続
新規事業は軌道に乗せるまでに時間がかかるもの。成功するまで継続する忍耐が必要
 
そして、この三つが揃うことで、オープンイノベーションがますます加速していくのではないかと述べた。また、その後の質疑ではスタートアップ側に求められる要素について質問があり、両者双方の歩み寄りの必要性について議論が及んだ。
 
 
■新規事業の創り方
ここで改めて片岡氏は「新規事業を創る」事について、ベンチャー創業・社内新規事業の立ち上げを問わず、製品/サービス・売上・顧客・組織が「ゼロ」の状態から「新しい事業を立ち上げていくこと」と定義し、そのセオリーとして8項目を挙げる。

 
新規事業を成功させるための8つのセオリー
 

①から④は「無」のセオリーである。①はとりわけ大企業は一回立てた計画に縛られてしまいがちだが、そこを取り払い市場の変化に柔軟に対応していくことが大事だということであり、④は最悪のケースを想定しリスクを緻密に計算することで成功の確率をより高めていくということである。
⑤から⑧は「有」のセオリーである。⑦は自分に何ができないかを明確に知った上で、弱みを克服しようとするのではなく、弱い部分は誰かに助けてもらい自己の強みに特化することであり、⑧は新規事業の多くがマーケットそのものを新しく創ることでもあるので、マーケットを広げていくためのパートナーとして捉えることだという。
次に片岡氏は新規事業の全体像について説明。ビジョンを掲げ、ゴールを設定し、戦略を考え、実行していくにあたり、パーツを埋めていくことそのものが新規事業の創ることになるのだが、肝要なのは「どこから議論すべきか」であるという。そして片岡氏は、一番大上段であるゴールのWHYから始めよと提言。

 
WHYからはじめよ
 

というのも、新規事業は幾つものパーツが複雑に絡み合っているのでWHAT・HOWを議論していくうちにWHYがブレて揺らいでくることが往々にしてあるからである。そしてこの揺らぎの中で新規事業はブラッシュアップされていくのだが、WHYがブレると新規事業を創っていく上で生じる様々な困難に耐えられなくなるという。ゆえにブラさないWHYがまずあり、パーツを重ねていくスタイルでアプローチしていくのが大事だと述べる。さらに片岡氏はWHYを考え突き詰めていく上で、
 
・Motivation 好きな気持ちやこだわり
・Market 社会において満たされていないニーズ
・Mission 組織の方向性/シナジー/リソース
 
という三つのWHYが重なったところを見つけることを勧める。「この重なりを見つけることができたら新規事業はもう半分成功したようなもの」であり、三つのWHYすべてが大事ではあるが、特に「なぜ自分はやりたいのか」という気持ちを極限まで問うことが肝腎であると片岡氏は強調。新規事業は失敗したり、様々な抵抗にあったりと非常に心が折れるもので、その心を支えるのは自分のWHY(好きな気持ちやこだわり)であり、他のWHYでは支えられないことも多いとのこと。

 
RGBモデル
 

また、新規事業を立ち上げる際に多くの人が最初に陥るのが、ビジネスプランを書き終えた段階で満足してしまい、行動に起こさず終わってしまうことだと片岡氏は指摘する。そして、事業プランとは書いた段階ではあくまで仮説であり、プランの作成がゴールではない。その次のアクションに繋げていかなければならないと述べ、行動・チェック・アクション・ブラッシュアップというPDCAの繰り返し作業こそが新規事業の本質であると強く言われた。
セミナー終盤に片岡氏は「良い事業プラン」を下記の8項目に総括する。
 

・ワクワクするビジョンがある
・事業の意味、取り組む価値が感じられる
・事業の目的が具体的で明確
・自分を主語として何をやるかが書いてあり、主体性が感じられる
・誰を顧客にするのかが明確
・顧客に課題があり、魅力を感じる解決策(価値)を提案している
・なぜ、今その事業をやるべきかが納得できる
・事業の立ち上げ方、進め方が明確である
 

そして「結局のところ良い事業はWHYに凝縮されている。いずれも究極的には自己のWHYに関わってくる」と述べ、上記の点において周りの人が共感してくれるもの、自分がそれを信じきることができるものが良いプランなのではないかと見解を述べた。
さらに「良い事業プランとはプランにストーリーがあり、全体を通じた一貫性がある」と片岡氏は明言。ビジネスモデルとしては良く書けているプランでも、ビジョンがないとモチベーションを喚起し持続させることができない。マップが一つの物語として昇華されることで、はじめて良い新規事業プランになると語った。
また、周りだけでなく自分自身を納得させるためにもストーリーと一貫性の連関は肝要だと述べた。
最後に片岡氏は、Google創業者であるラリー・ペイジの言葉「アイデアに価値はない、思いついたらとにかく行動せよ」を引用し、セミナーを締めくくられた。
中身が非常に濃く凝縮された内容だった為、沢山の質問が挙がり、当初の予定時刻を大幅に超過する盛況ぶりであった。
審査会の発表者や会場に集った観覧者の人々にとっても、新規事業を立ち上げるということについて、改めて根幹から自己のモチベーションを顧みる機会を得られる会であり、「リーン・スタートアップ・ハッカソン最終審査会」に相応しい、価値のあるセミナーだったようだ。

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